危機管理広報

プロの目④ 正解はないけれど、近づく方法は存在する

「広報には正解がない」と言われます。危機管理広報にもやはり正解はありません。しかし、同じような危機に遭遇した他社の事例は数多く存在します。正解はなくても、「こういう対応をすると、メディアやSNSからはこのような反応が返ってくる」という経験則はありそうです。事例を分析し、教訓を導き出せば、正解に近づくことは可能である、とエイレックスでは考えています。
 そこで私たちは、日々報道される企業の事件・事故・不祥事のなかから、注目に値するものを毎月15件程度、ケーススタディとしてまとめています。

メディアスクラム

ケーススタディは次のような構成要素でまとめられています。①概要、②時系列経緯、③企業側の広報対応、④報道内容・トーンとSNSでの反応、⑤事例からの教訓──の5点です。

②の時系列経緯は、何月何日何時ごろに、何が起き、企業側がどのような対応をしたのかを報道やリリースから把握し、一覧性の時間軸の上に並べます。危機管理広報はスピードが問われます。この企業の対応は十分早かったのか、批判を招く遅さだったのか、この時系列経緯で把握します。

③の企業側の対応は、リリースであれば書かれている内容を、会見であればどのようなやりとりだったのかを新聞やニュース番組などで確認します。著名企業の謝罪会見は動画で保存されていることが多いので、それをチェックし、気になった箇所をピックアップします。

④報道内容・トーンとSNSでの反応が、この対応が正しかったのか、誤っていたのかの答えを示すと言っていいでしょう。批判的な報道やSNS上の炎上があった場合は、広報対応のどこの箇所が批判されたのかを特定します。事実を淡々と記しただけの報道であれば、その理由を(公表が速やか、情報開示が十分、真摯に謝罪、など)を掘り下げます。

ときどき、メディアによる報道は批判的なのに対し、SNSの反応はポジティブな場合があります(その逆もあり)。その場合、報道とSNSがそれぞれ事象ならびに広報対応のどの面に着目して、好意的または批判的に反応しているのかを、吟味し判断します。

最後は、⑤事例からの教訓です。この事例から何を学び取るべきなのかを2~3点、簡潔にまとめて提示します。事例に登場する企業と、エイレックスのお客様企業では立場が違うことが多いので、お客様企業の立場にたって教訓を示す必要があります。

これら①~⑤のプロセスを日々積み上げていくことによって、多くの企業の危機対応がその巧拙評価とともに、データとしてエイレックスの組織内に、さらに私たちスタッフの知見として蓄積されていきます。これらプロセスを積み重ねていくことによって、お客様に対し、より失敗しにくい(より正解に近い)ソリューションを提供できると信じています。

2022/10/15