危機管理広報

プロの目⑦ 危機管理広報対応における企業の陥りやすい失敗

不祥事を覚知した直後から、その対応が命運を分けることになります。その要となるのが、広報担当者です。 関係部署との情報共有やその整理、対応案の検討、トップとの協議、コメント案や想定 QA の作成など、広報担当者がやらなければいけないことは多岐にわたります。
 企業で不祥事が発覚した時に陥りやすい初動時の判断ミスについて、初動の要となる広報担当者視点を中心に見てみましょう。

 ・大した問題ではないとの安易な判断をしてしまう。例えば、かつては強く認識されなかったLGBTQ+などに関する不祥事の扱い。
 ・自社は大企業でもないし知名度のある企業ではないので記者会見はありえないなどとの経営陣の認識。
 ・まだ事実関係もはっきりしていないので明確になるまで待とうとして公表時期を誤ってしまう(公表時期が遅れてしまう)。
 ・いまだに公表の判断基準として「法律違反ではない、法律違反かどうか確定していない」を用いる。それゆえお客様との約束の仕様を守れていなくても法律の範囲内」として、品質検査不正などルール無視の不正行為も公表しないことになり、メディアから隠ぺい体質などと強く批判されることになったりする。(品質不正は、2017年10月の神戸製鋼所社長による品質不正に関する会見以降、多くの企業が自主的に公表するようになった)

次に、実際の記者会見についての、企業のスタンス、キーメセージ、QA作成などに関し陥りやすいポイントを挙げていきます。
 まずは、弁護士の意見に従うあまり、道義的部分で批判を受け、レピュテーションダメージにつながっているケースです。裁判であれば、もちろん基本は弁護士の意見に沿っての対応となりますが、記者会見においては、一般常識に照らしてどうかという判断基準も重要になります。そのため実際の記者会見に臨むにあたっては、弁護士に頼るだけではなく外部の第三者の意見も聞いたうえでの対応が必要になります。エイレックスも記者会見のお手伝いさせていただくことがありますが、弁護士の意見と食い違うことも多くあり、調整となるケースも多くあります。
 もう一つ気をつけないといけないのは、「社内の常識」は必ずしも一般の人々の常識ではないという点です。「そのやり方を長くやってきた」からというだけで今同じやりかたでよいとは言えません。

謝罪会見での対応は、世間が注目します。何を伝えるために開かれた会見なのか、企業側の都合として弁明だけが述べられていないかなど、厳しい目も向けられるでしょう。
  情報発信が当たり前となった現代では、あらゆる企業において、不祥事に対する危機管理が非常に重視されています。広報担当者の皆さんは、第三者の視点で、企業内で起こっている事象を見ることができるよう常に意識してください。また、常に第三者視点を体制に組み込むという意味合いで、常に外部の第三者のサポートを受けることができる体制構築も一案です。

2022/12/15