危機管理広報

プロの目⑭記者会見を通して得られるもの

社長会見や決算発表、新製品の発表イベントや不祥事案が発生した際の謝罪会見など、日々、様々な記者会見が行われています。
 消費者や取引先、株主や社員など、多岐に亘るステークホルダーは、記者会見の場で企業が発信するメッセージに関心を寄せ、共感することもあれば、心が離れていくこともあります。記者会見の場は、広報活動の醍醐味であり、広報パーソンの真価が問われる局面ではないでしょうか。

決算発表や新製品・新サービスの発表イベントなど、通常、企業が実施している会見においては、リリースやパワーポイント等を活用した資料をベースに説明が進みます。また、日頃の取材活動を通じて、企業の事業活動に一定の理解がある経済部の記者が主たる出席者になります。広報パーソンは、ポジティブなメッセージをターゲットに向けて強く発信することに腐心します。
 一方、謝罪会見においては、企業との日頃のコミュニケーションがない社会部の記者から厳しい追及を受けることになります。多くの企業にとって経験をしたことがないことから、経営層や広報パーソンにとって不安を抱える会見となります。

最近では世の中の耳目を集める記者会見は、ライブでその模様を視聴することができます。中には2時間を超える会見もありますが、極力全てのシーンを視聴することをお勧めします。
 視聴後は、広報担当役員や広報メンバーと会見に対する評価を行うことで、新たな気付きを組織で共有することができます。さらに、報道状況やネットの反響を確認するとともに、他社の広報パーソンや記者の方々の評価や率直な意見をヒアリングすることで、自身の評価とは異なる考えに触れることができ、広報パーソンとしての知見や有事に対する感度を磨くことにつながるものと考えます。

私は、下記に注目して会見を視聴しています。
・会見冒頭、登壇者が話す内容と所作
・多くの質問が寄せられる論点と回答振り
・登壇者が発信しているメッセージや言葉
・登壇者の表情や態度
・登壇者間のコミュニケーション
・会見の場で流れている空気(感)
・会見全体を仕切る司会の対応

エイレックスでは、経営層や幹部クラスを対象に、新聞社の社会部出身のスタッフや企業広報経験者らが記者役となり、リアリティのある模擬会見のトレーニングを行っています。
 記者会見は、企業や経営者の本音がにじみ出る場です。有事の備えとして、また社会に対する組織の適応度を確認する場として、活用してみてはいかがでしょうか。